スタンデンハウス|ウィリアム・モリス空間を体感する
こんにちは。デコール東京・飯沼でございます。
年明け早々、ドイツ・イギリスをめぐる6泊8日の旅に出かけました。
インテリア文化研究所(代表:本田榮二氏)主催のプロ向け欧州視察ツアーですが、イギリス部分の企画を担当、トレンディなスポットと歴史的に価値のある場所を織り交ぜました。
その中から、「トータルデザインの巨匠空間を体感する」というテーマで、3回に分けてお届けしています。
トータルデザインの巨匠とは、建築+インテリアの両方を手がけたデザイナーたちのことで、今回のツアーで体感いただいたのは、ザハ・ハディド、ウィリアム・モリス、ロバート・アダムの3人です。
1)ザハ・ハディドはインテリアもすごい!ROCA社ショールーム
2)ウィリアム・モリスの世界にうっとり、スタンデンハウス
3)ロバートアダムの傑作に出会える、ケンウッドハウス
今回は、2)のウィリアム・モリス編です。
ウィリアム・モリスの世界にうっとり、スタンデンハウス
ロンドンをツアーに組み込むにあたり、主催の本田先生から与えられたテーマは、「ウィリアム・モリス」。
ツアー参加者の中には、ウィリアム・モリスの壁紙やファブリックを販売している方、施工している職人さん、モリス好きのインテリアコーディネーターなど思い入れがある方も多く、当初から楽しみにしてくださっているようでした。
ウィリアム・モリスは19世紀に活躍したデザイナーですが、今も当時のデザインが壁紙やファブリックが生産され、愛されているというのが、すごい。
私もお客様への提案に使うことが度々ありますが、シックで控えめな華やかさ、そして自然と共生するコンセプトなどが日本の空間によくあいます。
(色柄のデザインだけでなく、生地や壁紙の紙そのものがいいので、上質な空間になります。)
そして、本場イギリスでウィリアム・モリスの真髄に触れることができ、モリスワールドを堪能できるのが、今回ご紹介するスタンデンハウス(Standen House)です。
スタンデンハウスは、モリスの会社、モリス商会が建築、インテリアともに手がけたカントリーハウス。
建築設計は、ウィリアム・モリスの親友で、モリス商会の主要メンバーであった、フィリップ・ウェブ。
1892年−1894年の建築で、125年以上も前、モリスが生きていた時代の内装が残っている貴重な家。
ウィリアム・モリスが主導したアーツ&クラフツを具現化した家としても価値ある家です。
(アーツ&クラフツ運動:
生活と芸術を一致させようとするウィリアム・モリスのデザイン思想とその実践。)
ロンドンのセントパンクラスを鉄道駅にするなど、産業革命によって財を成した弁護士Beale(ビール)氏が、モリス商会に家の設計・デザインを依頼をしました。
ビール夫妻と7人の子供たち、そしてゲストのためのカントリーハウスで、一つのファミリーが代々住んでいたことで、当時からの内装や調度品の多くが残っているのです。
寒かったこの日、一歩足を踏み入れると、暖炉の火とピアノの生演奏があたたかく出迎えてくれました。
私たちが日本人とわかると、震災後、辻井伸行さんがカーネギーホールで弾いた ”Elegy for the Victims of the Earthquake and Tsunami” (それでも生きてゆく)を演奏してくれました。
楽譜も見せてくれて。
こちらはゲームルーム。ビリヤードのお部屋。
1862年のロンドン万博は ジャポニズムを広めたきっかけになりましたが、こんな日本の美人画もありました。
リビングルーム(ドローイングルーム)。
英国インテリアといっても実に様々ですが、日本人の多くが想像するのは、トレンディなロンドンインテリアなどではなく、このような感じかもしれませんね。
2階には個室とゲストルーム。
暖炉の前のベビーバスのようなものは、ヒップバスと言って、女性の入浴用。
当時は、使用人にお湯を持ってきてもらい、手伝ってもらいながらこんな小さなところで入浴していたのですね。
でも、そんな時代の古臭さを感じることなく、まさに日本人が憧れるような英国風インテリアの世界が広がり、あたたかな家庭らしい雰囲気に包まれます。
経年変化もいい感じです。
階段はこのような感じ。
スタンデンハウスは、ロンドン中心部から南東に車で1時間半ほどかかるウエストサセックス(West Sussex) というところにあります。
往復の時間がとられますが、「感動的だった」「一日中いてもよかった」」とおっしゃっていた方たちもいて、行った甲斐がありました。
素敵なカフェもあるのですが・・・
皆さん見学に時間をかけ、お昼も食べずにバスに乗り込むことになりました。
(今回ご紹介した画像以外にもたくさんのお部屋があリます。)
この後は、ウィリアム・モリスギャラリーへ行き、モリスの人生を追いながら、更に理解を深めることになります。
↑このギャラリーは、ウィリアム・モリスがティーンエイジャーの頃、実際に住んでいた家です。
ここでは、ウィリアム・モリスの幼少時代から、聖職者を目指したオックスフォード大学時代、後に結婚するジェーンとの出会い、モリスが仲間と設立したモリス商会(モリス・マーシャル・フォークナー商会)、社会主義者・文筆家としてのモリスなど、ウィリアム・モリスの人生を辿ることができます。
そしてこの日の最後は、ピーター・ジョーンズ。
ピーター・ジョーンズはロンドンの一等地にあるデパートですが、インテリア用品が充実しています。
ここでは、ウィリアム・モリスの壁紙やカーテン、テーブルクロスやクッションなどがどのよう販売されているかをご覧いただきました。
壁紙もこのようにデパートで買うことができ、施工を依頼することもできます。
デュべカバーや・・・
クッションなど・・・
生地コーナー。(あいにくモリス写ってないですが、たくさんあります。)
正に、ウィリアム・モリスな一日となりました。
追記)
ちょうど私は今、10年前にリノベーションして、ウィリアム・モリスのカーテンと英国から輸入した家具を納めたお宅の家の模様替えをやっています。
お客様がこれまで集めてきたアートやランプ、壺などが引き立つよう、整えているところです。
「役に立たないもの、美しいと思わないものを家に置いてはならない」というモリスの名言を思い出します。